一般社団法人士業適正広告推進協議会(士推協)

士業広告の特殊性

2020年12月23日

士業適正広告推進協議会 顧問
弁護士 深澤諭史

1.士業広告の特殊性

どんな商品であれ、サービスであれ、広く利用をしてもらうためには、多くの人々に知られることが必須である。

したがって、法律上禁止されていない限り(なお、かつて弁護士の広告は禁止されており、解禁されたのは2000年10月1日からである)、どんな商品もサービスも、宣伝広告にしのぎを削っている。

広告である以上は、もちろん、その商品・サービスが、いかに優れているか、競合と比べて優位にあるか、需要者に大きなメリットをもたらすのか、ということが強調される。

そのようなことは、需要者からみても百も承知である。したがって、ともすれば、やや誇張した広告であっても、話半分に受け止められ、ある程度の誇張は、許容されている。

士業広告であっても、いかにそのサービスが優れているのか、強調するのは当然である。このことは、他の分野の広告と一切変わりは無い。しかしながら、士業広告については、景表法だけではなくて、士業団体が定めた規則により、さらに厳重な規制が敷かれている。たとえば、弁護士広告であれば、弁護士等の業務広告に関する規程が、より詳細で厳格な規制を定めている。

このような「上乗せ」の規制がある理由は、士業広告に、そういう規制を課さなければならない特殊性があるからである。

2.士業広告が特殊な理由

士業広告が特殊な理由は、士業の提供する業務が、人生において滅多にない場面において、それも緊急に迫られており、かつ、その優劣の判断が市民にとって困難な業務である、という点にある。

すなわち、弁護士であれば、例えば訴訟を起こされたなどのトラブル、司法書士であれば、自宅の購入などのライフイベントであり、そもそも、滅多に依頼するものではない。

また、刑事弁護であれば、一刻を争うのであり、緊急に迫られている、という状態なのはいうまでも無い。

更に、士業の業務というのは、一定の資格がないと行う事ができないものである。その趣旨は、業務の高度の専門性故に、無資格者に行わせると、不測の損害が生じかねない、という点(もちろん、これに限ったことではないが)にある。

そうすると、需要者からすると、士業の業務の優劣の判断は非常に難しい、ということになる。

このように士業の業務には、滅多に依頼しないこと、緊急であること、優劣の判断が難しいという特殊性がある。

これを士業広告の視点からみると、滅多にない、緊急のことであるので、仮に誤解を招くような表現を使ったとしても、需要者は、容易に(!)騙されてしまうことになる。また、優劣の判断が難しい以上は、真実よりも優れていると装うことも容易である、ということになる。

このように士業広告の特殊性は、士業の業務の特性に由来し、そして、悪質な広告が出現した場合には、容易に需要者が被害に遭ってしまうという点にあるといえる。

3.士業広告の適正化の必要性

以上述べたとおり、士業広告が悪質なものになった場合、需要者がこれを判断することは容易ではないし、簡単に被害に遭ってしまうという構造がある。

そして、悪質な広告が横行するようになれば、広告を実施する個々の士業だけではなくて、士業広告全体の信頼が失われることになる。「どうせ士業広告はデタラメも多いのであるから、それを見て選ぶのは無駄である」と認識されてしまう、ということである。

そうすると、士業は、広告を通じて業務を発展拡大する機会を失うことになる。また、需要者からしても、士業広告を通じて、多くの士業の中から、一番、自分に合った者を選ぶという機会を失うことになる。

士業広告の適正化は、ともすれば需要者の目線から語られがちであるが、他ならぬ、我々士業の立場からも、喫緊の課題であるといえる。